
医学部小論文の特徴
一般に大学が小論文を課しているのは、
1.課題の文章や資料を通して、筆者の主張や資料の内容を客観的に読み解く力があること
2.出題者の意図を把握したうえで、自分の主張を筋道を立てて説明する力があること
3.現代社会の諸問題についての基礎的な知識や関心があること
以上の3点を審査するためです。しかし、医学部の場合、他の学部と異なり、将来人命や健康に直接関わる仕事に就く人がほとんどであるため、
4.医師としての資質・適性があること
という点も合わせて重視されます。したがって、その点をいかに答案上でアピールするかがとても重要です。
小論文の学習ポイント
小論文の学習で大事なことは、前述した4つのポイントをバランスよくマスターすることです。(1)については、小論文だけでなく、英語や国語の勉強の際にも、与えられたテクストを論理的に読む訓練をしておく必要があります。
(2)については、一定の論証パターンをベースにして、どの論点をどの順番に書くのか、という答案の流れを意識しながら、答案構成の練習を繰り返すことが重要です。
(3)については、日頃から新聞やインターネットなどを通して、最新の社会問題や時事問題などに幅広く触れておくことが不可欠です。
(4)については、医療問題について書かれた書物を新書レベルでよいので、何冊か読んでおくことが望ましいです。
次に、(2)で触れた論証パターンについて概観します。まず、自分の主張を読み手に説明するには、論理的に書く必要があります。論理的に書くには、一定の論証パターンにしたがって文章を組み立て、筋道を立てて自分の主張を説明しなければなりません。
いわゆる「序論→本論→結論」というパターンで書くのが一般的です。
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課題文や課題資料が与えられている場合は、その内容を正確に読み取り、必要に応じて要約します。次に、筆者の主張を前提にして、自分が何について述べるのか、論の方向性を示すために問題提起をします。その際、課題文で筆者が言っていることと、出題者が設問で聞いていることをよく把握したうえで、自分の結論に対応するように、問題提起を設定することが重要です。 |
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まず自分の主張を先に述べて、仮説を立てます。そして、それを検証するのですが、方法としては大きく、個人的な事例や社会的な事例などの具体例を挙げて自分の主張を説明する方法と、反対説を紹介してそれを批判し、自説の正当性を強調する方法があります。採点のウェイトはこの論証プロセスに置かれているので、答案構成をする際に、しっかり筋道を立てて自分の主張を説明することが重要です。 |
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冒頭で設定した問題提起に対応するように、端的に結論を書きます。そして、その結論が設問に対して正面から答えるものでなければなりません。最後にもう一度、設問を読んで、出題者から問われていることに端的に答えているかを確認しましょう。 |
大学別小論文対策方法
小論文で問われるのはどの大学でも基本的に医療従事者の資質・適正であるが、形式が大学によって異なるので、自分が受験する大学の問題を分析して、制限時間や制限字数、テーマの傾向などを踏まえて対策することが肝要である。
帝京大学|埼玉医科大学|独協医科大学|藤田保健衛生大学|自治医科大学|日本大学|杏林大学|日本医科大学|岩手医科大学|愛知医科大学|兵庫医科大学|福岡大学|金沢医科大学|近畿大学|北里大学|順天堂大学|昭和大学|東京医科大学|東邦大学|久留米大学|川崎医科大学
帝京大学〈国語〉
制限時間は3科目で180分なので、国語に割り当てられる時間はおよそ60分である。必須問題として現代文1題、選択問題として現代文2題、古文1題、漢文1題が出題され、その中から2題を選び、合計3題を解くことになる。現代文の対策をした方が他大の小論文対策にもつながるので、古文や漢文より、現代文を選択することをお勧めする。現代文では、漢字、ことわざ、慣用句、四字熟語などの基礎知識や、傍線部解釈問題、空欄補充問題、欠落文挿入問題などで文脈把握力が問われる。さらに内容一致問題が出題されており、テクストの該当箇所と照らし合わせながら、各選択肢の真偽を判断する力が問われる。難易度は私立文系MARCHの国語と同レベルで、文章も既出のものが採用されることが多いの で、帝京の過去問を一通り解き終えたら中央、立教、青山学院、学習院などの過去問に挑戦してみるとよい。
埼玉医科大学〈国語〉
制限時間は60分で、現代文4題が出題される。難易度はそれぞれ違っていて、本文中に解答の根拠がある問題が中心だが、中には地歴公民の知識や一般教養、専門知識、計算力などを問う問題も出題されている。ただ、あまり些末な知識を問う問題に時間を充てるよりも、本文を読んでその中から根拠を拾って答えを出すタイプの問題に重点を置いたほうが賢明だろう。つまり、捨て問を見極め、現場思考力で解ける問題を確実に解く練習を繰り返すことが大切である。
独協医科大学〈小論文〉
制限時間は90分で、小論文(600字以内)1題、計算問題2題が出題される。最近の課題文のテーマは医療系のものではなく、現代社会に内在する問題群から出題される傾向が強い。2010年では、バーチャル・リアリティや現代の子どもに関わるテーマが出題されている。よって、現代社会系のテーマについて基礎知識を習得することと、具体的な事例を挙げて自分の考えを論証する力を養成することが不可欠となる。基礎知識を習得する対策としては、中村雄二郎『術語集』『術語集Ⅱ』(岩波新書)を読んでみるとよい。
藤田保健衛生大学〈小論文〉
制限時間は60分で、小論文(600〜800字以内)1題が出題される。最近の課題文のテーマは医療系のものではなく、人間の生き方やあり方を問うものが多い。2010年では、物事に対する取り組み方について論じた文章が出題されている。このタイプの小論文は、専門知識というよりは、受験生の価値観そのものを聞いてくるので、自分の過去の経験をベースにして、自分なりの考えを論証することが必要である。
自治医科大学〈小論文〉
制限時間は90分で、小論文(200〜400字以内、400〜500字以内)2題が出題される。課題文のテーマは医療系のものが多く、出題傾向は一貫して変わっていない。文章の内容が高度なうえに、生命現象、死生観、科学の知、がん告知など、幅広く医療系のテーマについての基礎知識が求められる。医療系の基礎知識を習得する対策としては、山内常男編『ことばもクスリ』(医学書院)、高久史磨編『医の現在』(岩波新書)、小松秀樹『医療の限界』(新潮新書)を読んでみるとよい。
日本大学〈小論文〉
制限時間は60分で、小論文(800字以内)1題が出題される。最近の課題文のテーマは他者との関係性を問うものが多い。2010年では、医師と患者のコミュニケーションのあり方について論じた文章が出題されている。このタイプの小論文は、専門知識というよりは、受験生の価値観そのものを聞いてくるので、自分の過去の経験をベースにして、自分なりの考えを論証することが必要である。
杏林大学〈小論文〉
制限時間は60分で、小論文(800字以内)1題が出題される。課題文はなく、1行系問題の形式が採用されている。テーマは生活習慣病、環境破壊、喫煙、シルバーシート、ゆとり教育、良医、小・中学生の食生活、高校生の理数科離れ、患者中心の医療など、医療系のものだけでなく、現代社会に内在する問題群からも幅広く出題されている。1行系問題の場合、基礎知識がないと何を書いたらいいのか分からなくなるので、山内常男編『ことばもクスリ』(医学書院)、新聞を読んで幅広く知識を習得しておこう。
日本医科大学〈小論文〉
制限時間は60分で、小論文(600字以内)1題が出題される。形式面においては、課題文がある場合と、課題文がなく1行系問題が出される場合があり、出題傾向に一貫性はない。内容面においては、最近のテーマは医療系のものが多く、臨床と教育と研究、医療のおける偏見、疫病対策などが出題されている。医療系の基礎知識を習得する対策としては、山内常男編『ことばもクスリ』(医学書院)、高久史磨編『医の現在』(岩波新書)、赤林朗編『入門・医療倫理Ⅰ・Ⅱ』(勁草書房)を読んでみるとよい。
岩手医科大学〈小論文〉
制限時間は50分で、小論文(600字以内)1題が出題される。最近の課題文のテーマは、コミュニケーション、地域医療、環境破壊と人間など、医療系のものだけでなく、現代社会に内在する問題群からも幅広く出題されている。制限時間が短いので、答案構成を素早くして、スピードを上げて一気に論述する必要がある。医療系の基礎知識を習得する対策としては、山内常男編『ことばもクスリ』(医学書院)、伊関友伸『まちの病院がなくなる!?─地域医療の崩壊と再生』(時事通信出版局)、中村雄二郎『術語集』『術語集Ⅱ』(岩波新書)を読んでみるとよい。
愛知医科大学〈小論文〉
制限時間は60分で、小論文(800字以内)1題が出題される。最近の課題文のテーマは医療系のものではなく、賛否両論ある命題に対して自分の考えを論証させるものが多い。2010年では、哲学的思索に富んだテーマで、他我や真理について論じた文章が出題されている。哲学的なテーマの場合、表現が抽象的でレトリックが多用されている場合が多いので、本文の主題を読み取るのがかなり難しい。このタイプの小論文は、時として専門分野の基礎知識を前提に、受験生の価値観そのものを聞いてくるので、論理的な根拠を示して自分なりの考えを説明することが必要である。
兵庫医科大学〈国語〉
制限時間は90分で、現代文1題が出題される。設問については、50〜150字で記述させる傍線部解釈問題や空欄補充問題が並んでいるが、本文中に答えの根拠があるので、慎重に本文を読めば答えを導くことができる。ただ国語が苦手な人にとっては制限時間が厳しいので、問題演習を通して、スピードを上げる必要がある。そして最後に、自分の考えを説明させる問題が設定されている。記述問題の対策としては、中堅国公立文系の過去問を解いて学校の教員や予備校の講師に添削してもらうことをお勧めする。
福岡大学〈小論文〉
制限時間は60分で、小論文(400字程度)1題が出題される。形式面においては、2010年は課題文、2009年はグラフ、2008年は1行系問題というように、出題傾向に一貫性はない。内容面については、最近のテーマは医療系のものが多く、医師の資質、少子高齢化、喫煙などが出題されている。医療系の基礎知識を習得する対策としては、山内常男編『ことばもクスリ』(医学書院)、高久史磨編『医の現在』(岩波新書)、佐藤幹夫『ルポ 高齢者医療─地域で支えるために』(岩波新書)を読んでみるとよい。
金沢医科大学〈国語〉
制限時間は60分で、現代文1題が出題される。設問については、自分の考えは問われずに、300字以内で本文を要約させる問題だけであり、客観的な読解力が問われている。要約のポイントは、筆者が立てた筋道を追って、キーセンテンスを拾いながら、本文全体の論理構造をつかみ、一貫した自分の言葉でキーセンテンスをつなぐことである。その際、基本的に具体例は書かないので注意しよう。また、ただ本文の言葉を丸写しするのではなく、論理の順序に沿ってまとめる必要がある。そのためには、過去問を解いて学校の教員や予備校の講師に添削をしてもらうことをお勧めする。
近畿大学〈小論文〉
制限時間は40分で、小論文(400字以内)1題が出題される。課題文はなく、1行系問題の形式が採用されている。テーマは医療系ものが多く、チーム医療、高齢化社会における医療問題、医師不足、医療におけるインフォームドコンセントの重要性、医師の資質、医療崩壊の社会構造と解決策などが出題されている。制限時間が短いので、答案構成を素早くして、スピードを上げて一気に論述する必要がある。1行系問題の場合、基礎知識がないと何を書いたらいいのか分からなくなるので、山内常男編『ことばもクスリ』(医学書院)、高久史磨編『医の現在』(岩波新書)、佐藤幹夫『ルポ 高齢者医療─地域で支えるために』(岩波新書)を読んで幅広く知識を習得しておこう。
北里大学〈小論文〉
制限時間は90分で、小論文(20字以内、70〜100字以内、600字以内)1題が出題される。テーマは医療系のものが多く、終末期医療におけるインフォームド・コンセント、医師と患者のコミュニケーション、医師の資質、医学部に求められるアカデミズムの本質、生殖医療などが出題されている。設問については、タイトルをつけさせる問題、本文の内容を説明させる問題、自分の考えを説明させる問題という3つのタイプの問題が並んでいる。その対策としては、本文の主題を素早く把握する練習を繰り返すことが大切である。また医療系についての基礎知識を習得する対策としては、山内常男編『ことばもクスリ』(医学書院)、高久史磨編『医の現在』(岩波新書)を読んでみるとよい。
順天堂大学〈小論文〉
制限時間は70分で、小論文(800字以内)1題が出題される。課題は文章ではなく、絵画や詩、写真などであり、受験生の感性を問う問題が出題されている。とくに決まった答えがあるわけではないので自由に考えていいのだが、出題者の意図を踏まえるならば、やはり医療者の資質や適性という視点から課題を読み取ることが重要であろうと思われる。ほかに似たような問題を出す医学部は存在しないので、ひたすら過去に遡って順天堂大学の過去問を解く練習をしてみよう。
昭和大学〈小論文〉
制限時間は60分で、小論文(600字以内)1題が出題される。課題文はなく、1行系問題の形式が採用されている。テーマは、昭和大学の理念と医学の実践との関係、チーム医療における医師のリーダーシップ、昭和大学での学生生活の送り方、学ぶことの謙虚さ、日本における宗教の役割、医師の資質、コミュニケーションなど、医療系のものだけでなく、昭和大学に関するものや現代社会に内在する問題群からも幅広く出題されている。医療系についての基礎知識を習得する対策としては、山内常男編『ことばもクスリ』(医学書院)、高久史磨編『医の現在』(岩波新書)を読んでみるとよい。また昭和大学を志望する理由や大学で研究したいことなどについても、自分の考えを整理しておく必要がある。
東京医科大学〈小論文〉
制限時間は60分で、小論文(400字以内)1題が出題される。テーマは元ハンセン病患者の思い、地球温暖化、病気を通して得た筆者自身の新たな姿など、人間の生き方やあり方を問うものや、現代社会に内在する問題群から出題されている。このタイプの小論文は、時として専門分野の基礎知識を前提に、受験生の価値観そのものを聞いてくるので、論理的な根拠を示して自分なりの考えを説明することが必要である。幅広く基礎知識を習得する対策としては、新聞、高久史磨編『医の現在』(岩波新書)、赤林朗編『入門・医療倫理Ⅰ・Ⅱ』(勁草書房)を読んでみるとよい。
東邦大学〈小論文〉
制限時間は60分で、小論文(600字以内)1題が出題される。テーマは医療系のものが多く、尊厳死、患者中心の医療、延命治療などが出題されている。そして医師を志すものの立場から自分の考えを説明させる問題が設定されていて、医療者の資質や適正が問われている。医療系についての基礎知識を習得する対策としては、山内常男編『ことばもクスリ』(医学書院)、高久史磨編『医の現在』(岩波新書)、赤林朗編『入門・医療倫理Ⅰ・Ⅱ』(勁草書房)を読んでみるとよい。
久留米大学〈小論文〉
制限時間は60分で、小論文(800字以内)1題が出題されている。課題文はなく、1行系問題の形式が採用されている。テーマは医療系ものが多く、医療のIT(情報技術)化、家庭における高齢者介護のあり方、高齢者に対する医療のあり方、今必要とされている医師像などが出題されている。1行系問題の場合、基礎知識がないと何を書いたらいいのか分からなくなるので、山内常男編『ことばもクスリ』(医学書院)、高久史磨編『医の現在』(岩波新書)、佐藤幹夫『ルポ 高齢者医療─地域で支えるために』(岩波新書)を読んで幅広く知識を習得しておこう。
川崎医科大学〈小論文〉
制限時間は30分で、小論文(400字以内)1題が出題されている。課題文がなく、1行系問題の形式が採用されている。テーマは医療系のものが多く、医療事故、理想とする医師像、医療格差、仁術としての医、尊厳死などが出題されている。制限時間が短いので、答案構成を素早くして、スピードを上げて一気に論述する必要がある。医療系についての基礎知識を習得する対策としては、山内常男編『ことばもクスリ』(医学書院)、高久史磨編『医の現在』(岩波新書)を読んでみるとよい。





















